ダニは働き者!
私たち人間の狭〜い世界では、
「ダニ=自分たちの暮らしに害を及ぼす悪者」
というイメージが定着している感があります。
しかし、本当に私たちに悪さをするのは
ほんの一部のダニだけ。
全部で5万種はいると言われているダニの中の、
約一割に過ぎないそうです。
それでも十分、多いよ!という方もいるかもしれませんが・・・、
少なくともダニ=悪者と断定はできないということは確かです。
そもそも、私たちが自宅で接触する機会のあるダニは
ごく限られた種類のものだけで、
多くは森の中でひっそりと生活しています。
そこで何をしているのか?
どんな役割を担っているのか?というと、
落ち葉や朽ちた植物、
動物の死骸などを食べて分解しているのです。
そして、彼らのフンを土の中の微生物が食べて分解し、
最終的には養分となって
再び植物の根っこから吸収されるわけです。
その植物を、虫や鳥などの動物が食べる。
さらにその動物を別の動物が食べる。
・・・このようなシステムを「食物連鎖」といい、
ダニのような位置づけの動物を「分解者」と呼びます。
(理科の授業で習いましたよね!)
食物連鎖の関係を図で表すと、
このようなピラミッド型になっており
分解者の役割を担う生き物の数が圧倒的に多いことがわかります。
人間のような「消費者」は、
その“おこぼれ”にあずかってるようなもの。
偉そうな顔をしていますが、結局は
ダニのような稼ぎ頭がいなければ生きていくことができないのです。
ダニがいなくなったらどうなるの?
みなさん、週に何度かゴミを出しますよね。
もし、その回収業者が
いつまで経っても来てくれなかったら?
翌日になっても、翌々日になっても、
その次のゴミの日になっても。
・・・そんなことになればゴミは溜まる一方で、
あっという間に悪臭が発生するでしょう。
自然界におけるダニの役割は、まさにゴミ処理業者!
「ゴミを回収してくれること、それを処分してくれること」
それが当たり前で普段はその存在に
感謝することさえ忘れていますが、
ゴミ処理機能がストップしてしまったら
世界は循環していきません。
そう考えると、
いかにダニが重要な役割を担う生物かを実感できるでしょう。
ある意味では、「益虫」なんです!
しかしながら、人間の営みは時に彼らの住処を奪ってきました。
化学薬品による土壌汚染や、森林伐採、
分解できない化学品の投棄・・・等々。
5万種いるうちの1種類のダニが絶滅したとしても
私たち人間が実感できるレベルでの影響はないかもしれませんが、
自然界全体でみると大変な問題。
分解者は種類によって食べる物も異なりますので、
一種類いなくなるだけでも生態系のバランスを
大きく崩してしまうことになるのです。
「ダニと共存していく」という発想が未来を救う
「生物界」という広い視野で見た場合、
ダニがいかに重要な役割を担う生き物であるか
おわかりいただけたでしょうか?
私たち人間にとっては「害虫」でも
この世に「無駄な命」「いない方が良い存在」なんて一つもありません。
なにかしらの役割を与えられて生まれてくるのです。
確かに、ダニに刺されるとかゆいですし、
アレルギー症状は苦しい。
しかし、その戦いもまた「自然を生きる」ということ。
彼らもまた他の動物(人間も含む)と戦いながら
地球上に命の鎖をつないでいるわけです。
自分人間が特別な存在だと思っていると、
「ダニに煩わされている」と嫌な気持ちになりますが
「みんな戦いながら、なおかつ協力しながら
この地球上に生きている仲間なんだ」
そう思うことができれば、
ダニとの戦いで生じるストレスも
いくらか軽減されるのではないでしょうか。
人間の世界だって、いろんなタイプの人がいますよね。
多様性があるから成り立つ、それが生き物の世界なのです。
ダニがいるからこの世界が成り立っている。
彼らには、地球上の生態系を守る重要な役割がある。
その恩恵を受ける消費者として、
「彼らの命を尊重して、共存して生きていく」
という柔軟な考え方で彼らの存在を受け入れていくことも
時には必要なのかもしれませんよ。
(少なくとも、ダニに対する憎しみや嫌悪感は
いくらか和らぐのではないでしょうか?)